魔法連合領概略

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・魔法連合領 Wizards Association Area

 

 第四世界帝国が終わりを告げる頃、この世界は多くの魔法使いと彼らが使う魔法の力に満ちていた。しかしブルカン人が西の人々の前に敗れ、そのブルカン帝国が崩壊に向かうと、人々の間に、多すぎる魔法の力は忌むべきものととらえる風潮が広がった。それは魔法使いたちが強大な権力を独占していたからとも、魔法が時に恐ろしい力を暴発させていたからとも言われる。あるいはブルカン人たちが魔法に抵抗する力を持っており、魔法頼みの軍事力、そこから派生した政治力に、人々が不信を持ったからかもしれない。

 世俗の権力を急速に失いつつあった魔法使いたちは、それでもその一部が細々と各国の学術機関や貴族の庇護の元に落ち着いたが、残りの、あるいは生き残った一部の魔法使いたちは、ブルカン人たちの去った、そしてあまり人の手の及んでいない東の地を目指した。

 幾世代かを経て、魔法使いたちはそれぞれの流派、あるいは氏族に分かれて領地を持ち、互いに不可侵の条約の元に一つの連合領を作った。これが今の世に言う魔法連合領である。

 今は失われつつある魔法の知識もここでなら掘り起こすことができるものもあり、他国の魔法使いたちは、実際は新興ながらも、この地を魔法使いの故郷のように思っている。

 

・産業

 それぞれの領土はかなりの部分、領内での自給自足を可能としているため、交易等は小さな行商が動いている程度だ。その為、この地を走る鉄道はなく、西のグランツ帝国との国境沿いに、いくつかの大陸鉄道の駅がある程度である。

 しかし、より魔法の深淵に触れたいと願っている魔法使い、あるいはその見習いたちは、時に大金を持参して連合領の魔法使いに弟子入りを志願する。そうでなくともこの地を訪れる魔法の使い手は多く、領主たちは他国の貴族並みの豊かな暮らしをしている。そこにかつて追放と迫害を受けた過去が重なってか、領主たちは民にあまり税をかけず、ここに住む人々は、それなりに快適な生活を送っているようだ。

 また、産業というほどの規模ではないが、魔法の品々や触媒の取引も行われており、そういったものの利益が大きい領地では、より一層租税は軽いものになっているという。

 他国では微妙に警戒される魔法使いたちだが、この地では魔法使いの旅人は人々にとても歓迎される。たとえそれが負の力を持つ魔法使いでも、この地でのごだごたは避ける傾向にある上、何よりも魔法使いが移動している姿は、それだけでこの地に富を落としてくれることが期待できるからである。

 

・政治

 それぞれの領主が、封建制に近い政治形態を営んでいる。多くの魔法使いの領主がいるものの、それぞれがあまり大きな領土を持とうとはせず、広い土地に権力上の空白地帯は多い。大きな布に、雨粒の雫が落ちたように、ほぼ同心円を保った領地が点在しているといった感じだ。

 このようなどの領地にも属さない地域にも、自治権を持つ多くの村と町が点在する。いずれも近隣の魔法使い領主とは、良好な関係を保っているようだ。

 

・軍事

 志願兵による小規模の軍隊を、それぞれの領地が保有している。多くは他国で傭兵や兵士をやっていた者たちで、平時には警備兵を兼ねている者も多い。

 主に東部から怪物の群れがやってくることもあるが、それぞれの領主が協力して退治に向かっている。その為、東部には戦闘を得意とする魔法使いの領土が多いようだ。人々の印象とは違い、魔法使いの多くは戦闘に適した魔法を扱えるわけではない為、その力を持つ者は自ら東の地へと赴くことが多い。

 

・住民

 魔法使いの治める領土とはいえ、領内の魔法使いは統治者の一族を中心としたごく一部に限られており、この地域に住む人々が日常魔法の奇跡に触れることは少ない。

 しかしながら魔法についての一般的な知識は他国に比べて圧倒的に高く、病気になったからといって地元の魔法使いがそれを治してくれると思うような短絡的な者はいない。それぞれ、自分たちの領主がどんな魔法を得意としているかくらいは把握しているのだ。専門的な知識はないにせよ、ここのの領主は火を扱い戦闘が得意、隣街の魔法使いは占星術が得意で未来を予見する力がある、といった具合だ。

 ほとんどの民が現状の統治に満足しており、ここでの不満は若者を中心に、刺激が少ないといったものがある程度だ。

 

・宗教

 ほとんどが土地神信仰だが、セイヴィア教徒も少なからずいる。

 魔法使いたちはあまり信心深い方ではないが、知恵や知識に関連する神に対する信仰を持っている者もいるようだ。

 

・言語

 元々の住民たちは第三世界帝国時代から住んでいる者たちであり、そうした者たちはラテン語を使う。西部では比較的新しい住民、帝国からの移住者が多いため(帝国の領土の一部だった時もある)、グランツ語が用いられる。しかし最も多いのは共通語である。

 

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