スミサ概略

m2

・スミサ Smitha

 

 国土の大半が山岳部であるこの国には長い間、主要産業と呼べるものはなく、民は山間の村でひっそりと自給自足の暮らしを営むか、食い扶持に困った若者が、傭兵となって国を出るかであった。グランツ帝国の一地方であったが、この辺りをあえて領土とする諸侯はおらず、一応は皇帝の直轄地という形だけがあった。

 潮目が変わったのは第四世界帝国勃興前の大陸歴3000年の少し前で、険阻な地形に守られ、かつ労働力の余っていたスミサは、グランツ帝国の武具製造地として活力を得ることになる。この時、国内外から多くの職人が、民の指導者となるべくしてやって来た。

 ブルカン人たちを退けた後も職人たちは武具に限らずあらゆるものを作り続け、やがてそれは一大産業へと発展する。

 グランツ帝国の支配力の減退に合わせて、3435年には帝国から独立、一つの国として歩み始める。

 

・産業

 ありとあらゆる工芸品、武具、その他日用雑貨まで、この地では様々なものが作られている。大陸の工業製品生産では、質の面で随一となっており、人間だけでなく、ドワーフやエルフの職人たちも、日夜腕を振るい続けている。

 工業製品の生産だけでなく、そこから派生した学問も盛ん。複数の学術都市も有している。

 職人と学者の国であり、他国でそれらを志す者も、この国で修業期間を設けたいと思っている者が多い。それがスミサで作られた物であるというだけで価値が跳ね上がるように、スミサで職人の修行、あるいは学業を修めて来たというだけで、故郷に帰った時にそれなりの箔がつく。

 

・政治

 元は帝国より赴任した伯爵家(現在はスミサ家と名乗っている)によって治められており、独立以前より二倍に国土を拡張し、伯爵家は複数の伯爵を兼ねてこの地を統治している。国体だけ見れば、元がそうであったように、帝国の洲のひとつのようでもある。

 法についてはこの伯爵家と職人、学者の代表が話し合って決めており、法の策定過程はまるでギルドの会議のようでもある。教会が関与していないというだけで、政体はパリシの三部会に似ている。

 いずれにせよ、他国とは似ているようで微妙に違う、独自の統治形態である。

 

・軍事

 特徴的な、長槍部隊を有している。ただこれは他国に傭兵に出る為の装備で、自領で戦う際にはさほど用いられない。山岳地帯であるため、騎馬の兵は少なく、騎士でも徒歩の重装備部隊が中心である。騎馬兵はもっぱら軽騎兵か、斥候として編成されている。

 兵の割合は徴兵と志願兵が半々で、職人や学者として将来有望な者は徴兵を免除される。志願兵は(希望が通るかどうかは別として)長槍部隊を希望する者が多く、かつては仕方なく長槍傭兵を排出していた歴史を振り返ると、皮肉な構図になっている。しかし志願兵の多くは、長槍部隊こそスミサの伝統と思っているようだ。

 兵は少数で練度も低めだが、要所に建設された砦には最新鋭の防御兵器があり、天然の要害であるこの地をたやすく落とせる勢力はないだろう。

 各国との関係は良好だが、隣接する領土を持つグランツ帝国内の貴族は、隙あらばその領土の一部を切り取ろうと画策している為、小規模な戦は時折行われている。

 

・住民

 職人や学者、あるいはそれに関係する職に就きたいと思っている者が大半である。しかしながらそれ以外の職種というのは常に人材不足であるため、この地では食い扶持にあぶれることはそうそうないのだが、この事実は他国に、あるいは自国内でもあまり知られていない。

 都市部ではいくつもの私塾が開かれており、都市部に住む人々に限って言えば、識字率は実に八割近くにのぼる。

 この地を商売や職人修行で訪れる人間は多く、人々はそうした者に対して歓迎的な態度を取る傾向にある。

 

・宗教

 セイヴィア教アモーレ派が多数だが、職人、学術関連の偉人を聖人として祀っている。

 

・言語

 スミサ語、グランツ語が主に話される。外国との取引が多い為か、近年公文書が共通語で作成される傾向にある。

 

もどる

inserted by FC2 system