グランツ帝国概略

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・グランツ帝国 Glanz Empire

 

 大陸北部、南北に伸びるこの帝国は、パンゲアの中でも屈指の経済力と技術力を誇る大国である。ただし、これはあくまでこの地域をひとつの国としてみた場合のことである。

 実際には自治を認められた諸候が大小無数の自治体を形成しており、次の皇帝、ないしは帝国からの完全な独立を目論んでいる諸候もおり、決して一枚岩の帝国というわけではない。

 グランツ帝国は第三世界帝国、大ラテン帝国崩壊後にこの地域に残った者たちが打立てた封建国家であり、オリエンス帝国同様、自分たちこそが大ラテン帝国の継承者であると自負している。グランツが帝位を戴くのは、ひとえにこの大ラテン帝国の後継であるという意識からで、そのため、大ラテン帝国の発祥であった、現在のラテン都市同盟の地域が版図に加わっていないのをよしとせず、過去幾度もの南部への遠征が行われてきた。しかし今に至っても、かの地を"取り戻す"ことはできていない。度重なる遠征の失敗は、次の帝位を争う内部での足の引っ張り合いや、ラテン都市同盟に本拠を置く、教皇庁の工作によるものがほとんどである。

 しかしながら第四世界帝国時代には、ブルカン人たちの侵攻を食い止める為に一致団結し、ユーロ地域の防波堤となった。

 その後、国土を削られるように外縁部の領土が次々と独立を果たしていったが、今なお大陸屈指の大国であることに変わりはない。

 領土内にはいくつかの広い平野もあるが、その大半は深い森である。

 

・産業

 東は魔法連合領、西はスミサと国境を接していることもあり、魔法と科学の力を合わせた、魔法科学がこの地域では盛んである。魔法、科学、そしてその二つを合わせた学術機関もあり、各国から多くの者がこの地に学びの期間を求めてやってくる。ほとんどの者は挫折するか、初歩的な魔術を身につける程度でその学びと修行を終えるが、年間五、六人程の、一人前の魔術師を輩出していると言われる。

 帝国では、自国で次代の帝国を支えるエリートを見つける為、主に農村部から、才能ある若者の発掘に力を注いでいる。

 帝国内には多くの大陸鉄道の駅を誘致しており、私鉄も充実していることから、物流は速く、経済力は強い。また河川も多く、古来から水運は発達している。森を縫って張り巡らされたこの河川網こそが帝国経済の基礎であり命綱でもある。

 

・政治

 統治機構は、選帝侯に選ばれた皇帝を議長とした、帝国議会によって担われる。帝国法の基礎を定める帝国議会において、決議の拒否権を持つ皇帝は絶大な権力を有するが、州を中心とした領邦もまた有力な自治体であり、皇帝の一言で帝国全体を動かすには、念入りな根回しと、諸侯の友好的な態度を必要とする。歴代の皇帝で、実際にそこまでの指導力やカリスマを備えた皇帝は数えるほどしかいなかった為、その多くは議会の飾りであったり、有力諸侯の傀儡になっていた者がほとんどである。

 各州とも帝国法を法の基本とするが、それぞれの州法には違いがある。

 外から見ると、帝国はひとつの国として機能しているように見えるが、実際はそれぞれの領主が資本や人材を奪い合う熾烈な競争が行われており、時に諍いや軍事行動を伴った小競り合いにまで発展することも珍しくない。

 パンゲアで最も強大な国家でありながら、いつ崩壊してもおかしくはない、最も危うい国家でもある。

 

・軍事

 帝国内全ての兵を合わせると、その兵力はパンゲアで最大であるとされる。しかし全ての領邦が力を合わせることなどないと言ってもよく(ブルカン人たちの侵攻の際でもそうであった)、各州毎の兵力は小国並みである。

 ただ、北部、中部、南部、それら同士の州はそれぞれ軍事的には緊密な関係にあり、北部だけでもスラヴァル帝国と互角以上に渡り合っている。北部は対スラヴァル、南部は対ラテン都市同盟、中部はそれらに挟まれる格好で、緊密な関係を結んでいるというわけである。

 徴兵によって集められた兵の練度は悪くなく、装備もよい。兵器には最新鋭のものも導入され、日々改良が進められている。特に北部の諸候の兵は、強兵で勇名を馳せている。

 

 かつては魔法科学の粋が集められた自動機械兵というものが導入されたこともあったが、膨大なコストと故障が相次ぎ、実戦投入された際には、何の役にも立たなかった。

 理論上は最強の兵団であったはずだが、悪天候という予期せぬ事態(この話自体諸外国の笑いものになっているが)にまったく対応できなかったのだ。

 今日諸外国では、まったく役に立たないもののことを指して「グランツの機械兵のように」という言い回しが定着してしまっている。

 

 帝国内の大半を占める森には怪物や賊徒の姿もよく見かけられ、兵の実戦経験は豊富である。

 

・住民

 他国の人間からはいくらか陰鬱に映るようだが、国民の大半は真面目で、そこそこの誠実さを持っている。

 都市部では人間以外の友好的な種族もよく見かける。特にドワーフの技術者は、帝国では厚遇されている。

 

・宗教

 セイヴィア教徒が多く、各地に聖堂や教会が多数見られる。それまでのユーロ地域がそうであったようにアモーレ派が大半であったが、近年では北部を中心に、新興勢力ゼーレ派が着々と信徒を増やしているようだ。これら二つの宗派の諍いは、帝国内の摩擦を一層大きなものにしている。

 その他の宗教に関しては土地神が主で、都市部を離れると、河川毎にいるとも言われる川の神の信仰の信仰が最も多い。

 セイヴィア教と土地信仰が合わさった形であり、土地ごとの祝祭もある。

 

・言語

 公用語はグランツ語。都市部での識字率は二割程度と、かなり高い。

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