ジェネローザ

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・ジェネローザ Generosa

 ラテン都市同盟北東部、人口三百人ほどの宿場町ジェネローザは、かつては街道の交差点に立ち並ぶ馬車宿の集まりに過ぎなかった。交通量の多さと立地の良さがあいまって馬車宿の数は増えていき、その周りに職人が住みつくようになり、といった感じで、やがては町へと発展していった。この町を中継とする商会は多く、個人でやっている行商人もよく通るため、町は常に住民登録をしている人間の、三倍ほどの数を抱えている。

 町の特徴として、まず市壁を持たないことが挙げられる。この辺りには怪物の類は現れず、平野が続く周囲には、大規模な賊徒が隠れるような場所も無い。脅威があるとすれば近隣の都市に征服されることだが、歴代の支配者の立ち回りと近隣都市の支配者の理解もあり、ジェネローザがそのような危機にさらされたことはない。もっとも、ジェネローザがどこかに支配された所でそれはその都市の軍事的な庇護下に入ったということに過ぎず、この町にとって損なことはあまりない。むしろ危うい均衡の中にあるこの町を手中に収めることが他の近隣都市を刺激しかねないと、それぞれの都市統治者は、迂闊に手を出せない状態にあるというのが本当のところだ。

 ラテン都市同盟をひとつの国とみなせば、その中にある自由都市、というように、ジェネローザを位置づけることもできる。町から2kmほどの原野に私鉄の駅を誘致してからは、ますますこの町に手を出そうとする都市は少なくなった。いずれは近隣都市に並ぶ大きな街になるだろうとも思われている。

 統治者は、かつては近隣の領主であり、今は名ばかりとなった伯爵家の者が代々務めている。重要案件のほぼ全てをこの統治者、町長が決定権を持つが、民主主義が主流のこの地域でも、住民にこのことに対する不満はないようだ。代々の町長の優れた資質も大きいが、何よりもこの町の規模が小さく、住民誰もが望みさえすれば、食事を共にしながら町長に意見できる身近さによるところが大きい。

 

 滂沱の時代

 町長はクロリンダ伯爵夫人。実際は町長代理であるが、本来町長の座にあるカミッロ伯爵が失踪して以来、その執務についている。

 警備隊長のアデリーナの剣技は、近隣でも軽く噂になるほどのもので、突発的なものを除けば、この町で暴力沙汰を起こそうとする者は少ない。

 

 

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