イェティっていうのはアレだ、高山に住む、熊と人間を合わせたような怪物だ。 食うものが少なくなってくると山を下りて人家を襲ったりするところは熊と似てたりするが、人間並みの知能を持ってたりするからな、不用心に構えてたりすると、逆にこちらを待ち伏せしていたりもするな。熊と同じように考えてたらまずいってことだ。 もっとも、こいつらは熊を狩ることができる程度には腕っ節が強いがね。
パンゲア、特にユーロ地方ではそんなに出くわすことのないこいつらだが、神代の時代なんかでは、それなりの勢力を誇っていたそうだぜ。 そりゃそうだ。頭も悪くなく力も獣以上だとしたら、こいつらに勝てる生き物なんて、そうはいなかったろうからな。 ただ、エルフやドワーフはもちろん、当時は最も弱い生き物のひとつであった人間が、多くの知識や技術を蓄えていったのに対して、こいつらは強さに奢って時代に取り残された。 今となっちゃこいつらの生態がどうなってるのかってのはわからないことが多いが、腕っ節の強い連中だけが生き残る、そんな暮らしをしていたのかもなあ。 こいつらの中でも頭のいいヤツってのはいるんだろうが、せいぜいずる賢いってレベルだ。
そんなわけで衰退してった種族であることは間違いねえが、それでもこいつらはしぶとく生き残ってる。 そして種族として衰退したからって、少人数で相手にする場合には、こいつらの強さってのはまったくもってバカにならない。 おまけにその白い体毛で雪原に擬態して、不意打ちをくらわしてくることもある。 あたしも今まで何度かこいつらの相手をしたことがあるが、一度として楽な殺し合いにはならなかったよ。
雪深い高山で、それまで聞いたことのない獣の咆哮を聞いたら、少しは覚悟することだ。 やつらの縄張りでは、どんなに腕に自信のある狩人でも、こっちが獲物なわけだからな。
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